道後温泉 湯築屋 暖簾のむこうは神様のお宿でした (双葉文庫)

何か良い本ないかなぁと思って立ち寄った本屋さんで、素敵な小説に出会いました！この小説の舞台は四国は愛媛の道後温泉。ご当地もののライト文芸小説です。主人公の湯築九十九は女子高生である傍ら、温泉旅館『湯築屋』の若女将をしています。そして湯築屋のオーナーは、実は神さまである稲荷神シロ。九十九はこのシロさまの巫女で、かつ夫婦だったりします。湯築屋は、神さまをお客様として持て成す世にも珍しいお宿なんですが、ここにはなんと日本全国どころか、全世界から神さまがやってきます。物語のはじめのお客様なんて、あのギリシャ神話の主神ゼウス！他にも沢山の神や妖なんかが出てきて、みんながみんな個性豊かなんです！パリピじゃなくてパリゴなんです！天照なんかはかなりダメな方向で人間社会に毒されちゃってますしねー。なんか人間臭い神さまって新鮮です。あ、でもひとつ付け加えておきますと、天照も他の神さまもそうなんですが、ただ人間臭いだけじゃないんですよね。どの神さまもその在り方というか、存在の奥の方に神聖性や畏怖されるべき何かを持っています。あと神さま以外もいいキャラしています。私のお気に入りは京ちゃん！個人的には、京ちゃんがシロさまの美形っぷりに驚いて、シロさまと九十九を交互に見ながら目を丸くする展開なんかが読みたいです！子狐仲居のコンも凄くいい！ひょこひょこ足音を鳴らして配膳する様が目に浮かぶようで。かわいい。笑それで基本的にはお仕事ものの小説に分類されると思われる本作なのですが、他にも楽しめる要素がわんさか詰め込まれています。例えば九十九とシロの恋愛描写。普段はなかなかのイチャイチャぶりなんですが、人間と神さまだからこそのすれ違いなんかもあったりして、そういうのはやっぱりもどかしくて、でも甘酸っぱくて、なんかこう胸がきゅーってなります。あと旅館の料理や買い食いなんかの食べ物描写が沢山あって、しかもそれが非常に巧み！だからあまり夜中に読むのはお勧めできないかも知れません。こうして振り返ってみると、ほんとに色んな楽しみが詰まった良い小説でした！読んだ後は、道後温泉まで旅行に行きたくなること必至です。あ、あと文章もとても素敵なんですよ！なんといいますか、文字の流れが淀みないし、どことなく可愛らしくて…。読んでてすっごい気持ちのいい文章だなーって。ホントお勧めの小説ですので、みなさまも是非読んでみて、私と同じ満足感を味わって欲しい！とーっても面白かったですよ！