セラピストの動きの基本―運動器リハビリテーション新時代

『エビデンスがある』と言われるとそれが唯一の正解のような気がしてしまうことってありませんか。科学的であるはずだと思っていたはずのセラピーも科学的なものが思い込みのすり替わっていることがあったとこの図書を読むと気付かされます。副題には「運動器リハビリテーション新時代」とありますが第１章で触れられている内容は身体機能を扱うすべてのセラピストに共通する問題であります。症例の提示などにより肩関節の評価についての解説がありますが評価についてのhow toというよりも私たちが日々行っている評価についてのその意味や重要性を多角的に考えされられる（猛省させられる？）という点においてはセラピストとしての幅が大きく広がるとても有益な図書であると思います。こういった図書にありがちな成功症例の提示だけではなくうまくいかなかった症例の提示があることも山口先生がどのような思いで日々の臨床に向き合っているかを感じることができます。山口先生以外の執筆者も身体心理学や皮膚感覚といったテーマで理学療法の分野でもお世話になっている春木豊先生や山口創先生も参加されています。個人的には伊藤義徳先生のマインドフルネスがとても興味深く感じております。これまでマインドフルネスは慢性疼痛などの分野で発展してきていましたが理学療法の分野でも一気に注目が高まっていきそうな気がしております。自分の日々の仕事を再確認するという点でもセラピストとしての成長の仕方を学ぶという点でもすべでの経験年数のセラピストにとって価値のある一冊だと思います。